第67回目、美容ライターの石塚久美子さんにお話を伺います。大学卒業後、フリーランスの美容ライターとして活動をスタート。先端の皮膚科学、化粧品トレンドや健康法から国内外のメイクアップアーティストのインタビューなど、さまざまな情報に触れてきた石塚さん。もともと乾燥性敏感肌をはじめ、あらゆる不調に悩まされてきた経験から、タイ式ヨガ“ルーシーダットン”やボディワーク、スキンケアカウンセリングなどを学び、タイヨガ インストラクターやセルフケアコンシェルジュとしても活躍中です。また、都内数カ所の保健センター 精神保健デイケアでの社会復帰プログラムでアートレクリエーションの講師を担当するなど、多岐に渡る活躍ぶり。多忙な中でも心身のバランスを整えて健やかな暮らしを実践する石塚さんのセルフケアとは?「五感は健康と美容のマネージメントの入口」を信条にする石塚さんに、セルフケアで大切にしていることや日頃実践していること、セルフケアと五感の関係性などについて教えていただきます。

“いろいろなところがちょっとずつ不具合。そんな10〜20代でした”
ー 石塚さんは、もともと敏感肌や体調不良などに悩まされていたそうですね。
-
幼少期から花粉症をはじめいくつかのアレルギーがある体質で、いつ調子が悪くなるかわからないし、風邪もひきやすく、お腹も壊しやすかったんです。子どもながらに、どうしたら調子が良い状態を保てるんだろうとよく考えていました。重病なわけではないけれど、いろいろなところがちょっとずつ不具合といった状態。そんな10〜20代でした。
ー 現在は美容ライターとして、ヘアメイクや皮膚科学、敏感肌ケア、健康などを中心に執筆されていますが、美容ライターを志したきっかけについて教えてください。
-
大学在学中、当時関心があった美術やイラストの方へ進むか考えていた頃、美容ジャーナリストのアシスタントを募集しているからどう?と声をかけてもらったのがきっかけです。美容ライターになれば、美容と健康の情報がたくさん入って自分の体に何かいいことが知れるかもしれないと淡い期待もあって。ヘアメイクも大好きだったし、肌の状態も良くなったらいいなと。期待通り、取材を通して健康や美容についてのロジックをたくさん学ばせていただいて、知識はどんどん増えていったのですが、原稿で伝えるばかりで実践が伴わず、自分の体は元気になるどころかいっそう“プチ不調のデパート状態”に。
ー そうなのですね。セルフケアを実践し始めたのはその頃からですか?
-
ロジックだけでは、根本的には改善できないと身を持って体験したので、まずはそれまで実践できていなかった運動や食の改善に目を向けました。当時は姿勢の歪みも気になっていたので、体の使い方を大切にするタイ式ヨガ“ルーシーダットン”を始めて、そのほかボディワークやスキンケアカウンセリングなども学び、時間をかけてあらゆる側面からの知識と実践を組み合わせていたら、敏感肌や花粉症、PMS、胃腸虚弱といった悩みが少しずつ緩和して、調子を保てるようになりました。

“頑張りすぎないこと、無理しないこと。体の声を聴いて、ペースを考えることが大切です”
ー いろいろなケアを実践してきたと思いますが、石塚さんが良い調子を保つために心がけていることを教えてください。
-
何より睡眠、食事、運動、ストレスケアという基本が大事だと、ひしひしと実感しています。でも前提として大切にしているのが、「頑張りすぎないこと、無理しないこと」。取材を通しても感じますが、都会に暮らす女性は頑張り屋さんで、不調を気合いと根性でカバーしている方が多い。また、早く良くなりたいと焦っていろいろなことをやりすぎて、結果的にやること自体に疲れている人も。健康のために運動しなきゃと、普段からしていなかったのにいきなりマラソンや激しいトレーニングを始めたりすると、体を傷めたり、過剰な有酸素運動で体内に活性酸素が増えすぎて逆に疲れやすくなってしまったり。化粧品も、3〜4日使って効果を感じないからと次々と替えてしまうのは、意識が高いようで実は肌の新陳代謝を冷静に捉えられてない可能性が。私も今でこそ、きちんと自分の肌の状態や心のありように合わせて、選んだり取り入れたりすることができるようになりましたが、仕事柄たくさんの情報や商品に触れるので、昔はあれこれと新しいことを試しては肌が荒れるという繰り返しでした。
ー 確かに、結果を急いでしまいますし、情報も多い世の中なので次々と関心が違う方へ向いてしまうこともありますね。
-
体や肌を本当に整えたいと思ったら、もう少しゆっくり体の声を聴いてペースを考えることが大切なんですよね。私も3年くらい経ってやっと、なんとなく以前に比べて体力がついたなというくらいのレベルでした。それでもきちんと根本から立て直せたことで、それまで体調に振り回されて余裕がなく、自分のことで精一杯だったのが、良い調子を保てるようになると少しずつ心にゆとりも持てるように。心と体は繋がっているとよく言いますが、まさにそうだなと実感しています。

“「五感は、健康と美容のマネージメントの入口」。意識のスイッチを変えるトレーニングを”
ー 現代社会では、体だけでなく心のセルフケアも重要ですね。どんなことを大切にしていますか?
-
「五感は、健康と美容のマネージメントの入口」を信条に、五感を意識することを大切にしています。頭で考えることばかりにエネルギーを使うのではなくて、五感に意識を向ける時間を持つこと。関心のある事に集中している時とか、大失恋してそのことで頭の中がいっぱいな時などは、いい香りや素敵な音楽に触れても気づかないことってありますよね。体験していることと、思考がずれてしまう。だから、意識のスイッチをどこに持っていくかが鍵なんです。
-
例えば、良い香りだなと感じる数秒の間はちゃんと嗅覚に意識が集中しています。好きな音楽を聴いたり、きれいなアートを鑑賞したり、おいしいものを食べたり、日々五感で何かしら体験しているはずなのに、意識が向いていないことも多い。意識的にその瞬間に集中する、スイッチを変えるトレーニングをすれば、ストレスマネジメントにもなると思います。
ー 確かに、考えごとに集中していたら、同時にいい香りや音楽など五感で感じることを意識するのは難しいように思います。
-
少し意識すれば、視覚、聴覚、嗅覚、味覚は割とわかりやすいのですが、触覚はあまりに当たり前すぎて意外と意識できていないんです。触覚はとても大事で、スキンケアもその一環だと思います。触覚の重要性に気づいたのは、タイマッサージをタイ式ヨガの後に習ったとき。学びの中で、人に触れるとき、自分の心が焦っていると全部触り方にも出てしまうんです。それを遮断してできるのがプロのエステティシャンで、本当にすごいですよね。触覚って精神的な状態と密接に繋がっているんだなと感じました。

石塚さんが影響を受けた書籍。傳田光洋著『第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界』(朝日出版社)「皮膚や触覚から、どれだけ人のエネルギーが伝わるかを解説した書籍。2007年出版、そんなにも前から、人は思考だけじゃなくて、触覚、つまり肌から得た情報で行動を決めていると説いています」。班目健夫著『「湯たんぽを使う」と美人になる―4つの筋肉を温めるのがコツ!』(マキノ出版)「取材でお会いした斑目先生の著書。子供の頃から冷えに悩み、湯たんぽを年中活用して健康向上に成功した方です。これを読んで私も湯たんぽ派になりました」
ー 五感を意識するほかに、どんなセルフケアを取り入れていますか?
-
私が学んだタイ式ヨガ“ルーシーダットン”は動く瞑想と言われていて、10年以上続けています。完全に無言の瞑想は得意ではないので、カウントを追いかけたり、体の部分部分に意識を向けたりする方法が合っているみたいです。最近では心のペースを整えたいという方も増えていて、マインドフルネスや瞑想も流行っていますよね。焦っていたこと、頑張りすぎていたことに気づき始めた人も多いのではないかと思います。あとは、筋膜リリースボールやウェーブリングを使って、コリや張りのリリースは日常的に行います。もともと緊張型の体な上に、原稿を書くのに同じ姿勢でいることが多いので、肩回りや太ももなど筋膜リリースで緩めています。ボールは、エコノミー症候群予防にも良いので旅行にいくときも持っていきます。

左/ウェーブリング、右/筋膜リリースボール。「ウェーブリングは寝転がっている時に脚を引っ掛けたり、背中の下に敷いたりと、いろいろな使い方があります」
-
また仕事が落ち着くと絵を描いたり、ミシンをかけたりと、手を動かす時間を作ります。マインドフルネスが流行ったことで、アートで心を緩めるということが注目されて、大人のメンタルケアという視点で、アートや陶芸に関心を持つ方も増えているようです。絵を描くというとハードルが高いように感じるかもしれませんが、たまに描いてみると、その時々で選ぶ色や気になるモチーフが違って、おもしろい発見があります。普段はブルー系が好きなのに、一時期絵の具もメイクも洋服も、赤茶系を選んでいたこともあって。自分が今好きな色やモノ、コト、を観察して発見を溜めていくと、それが個性に気づくきっかけにもなるし、人と比べず自分の内にある良いところに目を向けて心地よい集中に向かうきっかけにもなってくれます。

「水彩絵具やインクを使って、自由に描いています。インクはパレットに出して薄めてもいいし、用紙に水を広げてその上にインクを垂らしても」
ー 石塚さんのこれまでの学びや好きなことが、心も体も調子を整えることにも繋がっているのですね。
-
そうですね。美容も健康もアートも繋がっているし、自分の五感を楽しませてくれるものは何か考えるのはとても楽しいです。セルフケアは、体の声を聴きながら自分を観察する作業、ということに尽きると思います。“セルフケアを頑張る私“を目指すのではなく、楽しみながら取り入れたことがセルフケアになっている、というのが理想ですね。私って今はこういうことに興味があるんだ、これを選ぶ気分なんだというのがわかると、自分がアップデートされた気がして。知識や情報だけでなく、感受性、五感、身体感覚、精神保健などの体験的な統合が、健康や美容、QOLを高めることに繋がるんだと、日々再確認しているところです。

photos by yoshimi
edit&text by Hitomi Takano

石塚久美子さん
(いしづか・くみこ)
美容ライター、セルフケア コンシェルジュ、ヌアセラピスト/タイヨガ インストラクター、ワークショップ デザイナー(健康芸術/感受性向上)、知事認定 栄養医学指導師。美容ライターとして、美容・ファッション誌などで執筆数するほか、暮らしにセルフケアを効果的に取り入れるためのコラム執筆や講師業、ワークショップ等なども。これまでの活動を踏まえ『五感とアート』『腸活』『温活』『敏感肌向けスキンケア』『デリケートゾーンケア』などをキーとした”無理をしないセルフケア”を提案している。
https://www.iszkkmk.com/
RELATED ARTICLE
関連記事
-
-
INTERVIEW
-
STYLE OF BEAUTY
スキンケア選びは、情報ありきではなく 自分との対話を大切にしたい。・石塚久美子さん<後編>
2023.02.10
-
-
-
INTERVIEW
-
STYLE OF BEAUTY
ドゥーオーガニックとは共通点が多いので、親近感がわきます・前田紀至子さん<後編>
2020.01.30
-
-
-
INTERVIEW
-
STYLE OF BEAUTY
年齢による経年変化を味わいながら、美容を楽しみたい・長田杏奈さん<後編>
2022.03.30
-
-
-
INTERVIEW
-
STYLE OF BEAUTY
小さなわがままを聞いて、自分を満たしてあげよう・長田杏奈さん<前編>
2022.03.25
-