「1人の100歩より、100人の1歩」できることを少しずつでいい/『HONEY』副編集長・稲見悠夏さん<前編>

「1人の100歩より、100人の1歩」できることを少しずつでいい/『HONEY』副編集長・稲見悠夏さん<前編>

2021.08.05

第53回目は、ビーチライフスタイル誌『HONEY』の副編集長を務める、稲見悠夏さんにご登場いただきます。バリバリと仕事をこなす編集者というイメージでしたが、実際お話しを伺うと、とても柔らかくてチャーミングな稲見さん。迷いながら、悩みながらも、誠実に向き合う姿がとても魅力的でした。稲見さんの仕事やサスティナブルに対する考え方などについて、お話しを伺いました。

文章を読むのも書くのも好き。自然と雑誌編集者になることが夢に。

ー 現在のお仕事をはじめたきっかけや、現在に至る経緯などについて教えてください。

私は茨城の海沿いにある田舎町で育ったのですが、ずっと都会に憧れがあって、本や雑誌、とくに雑誌にはまさに憧れが詰まっていました。文章を読むのも、書くもの好きだったので、いつの間にか雑誌編集者になることが夢になっていました。大学在学中、雑誌の編集部でアルバイトを経験し、卒業後は出版社に入社して、ギャル系ファッション誌の担当に。その後転職して、現在のビーチライフスタイル誌『HONEY』の副編集長になるに至ります。

『HONEY』vol.28より

ー 写真も美しくて、内容も充実していてとても素敵な雑誌ですね。海外へもよく行かれていたそうですが、思い出深い取材はありますか?

スリランカへは、アーユルヴェーダを知るために取材で訪れました。アーユルヴェーダの施設が100軒以上もあって、アットホームな施設から大規模までいろいろと選べるんです。毎日医師の体調チェックがあったり、それに合わせてアロママッサージや食事のアレンジをしてくれたり。男性も結構いたのは意外でした。みんな何をするでもなくホテルでのんびりしていて。私は取材でいろんな施設を転々としていたので、しっかり堪能はできなかったのですが……。プライベートでまたゆっくり訪れたいと思っている場所です。

スリランカでは、まだサーフカルチャーが発展していないけど、西洋のおしゃれなサーファーたちによって、どんどん新しい文化が生まれている様子もおもしろかったです。みなさんセンスが良くて。どんな風に変わっていくのか、これから楽しみな街です。

『HONEY』vol.28より

ー おしゃれな中でも、サスティナブルやオーガニックなどもしっかり特集されていますが、もともと、そういったことにも興味があったのですか?

環境問題に関心を持ったのは『HONEY』に所属してからですが、オーガニックコスメに興味を持ったのは、もう少し前。療養中の母に、足が浮腫んでいるからマッサージをして欲しいと言われて購入したのが、オーガニックコスメブランドのボディクリームでした。母はすごく気持ちいいと言って喜んでくれて。それがオーガニックコスメとの出合いです。ラベンダーの香りがとても心地よかったのを覚えています。それから自分でもなんとなく使い心地や香りの良さで選ぶようになったのですが、環境への配慮までは考えていませんでした。

「1人の100歩より、100人の1歩」という言葉で、肩の荷がおりました

ー 『HONEY』に所属して、サスティナブルに関心を持ったきっかけを教えてください。

『HONEY』は、ビーチカルチャーをテーマにした雑誌なので、「海や自然を大切にする」ためにできることはなにか?を考える機会は、編集部に所属した当初からありました。今では「レジ袋をもらわない」という選択は当たり前にありますが、当初から編集長やスタッフたちはもらっていませんでした。ペットボトルではなくマイボトルを持っていたり、海に行ったら落ちているゴミを拾ったりしていて。

私も海辺育ちなので、学校の授業で海の環境問題について考える授業があったり、ビーチクリーンが開催されたりすることはあったのですが、もし編集部でそれを強要されていたら、拒絶していたかもしれません。でも、みんなにとっては当たり前にしていることなので、誰からも押し付けられることなく、気がついたら自然と真似するようになっていました。

ー ご自身でも始めたことや発信していることはありますか?

実は、サスティナブルを発信することにとても抵抗があったんです。自分がきちんとできている自信もないし、「HONEY編集部なのにこんなこともわからないんだ」なんて言われたらどうしようと。そして何より自分自身が人に押し付けられていたらサスティナブルな活動はしていなかったので、伝えることが誰かへの押し付けになっていたり、誰かを傷つけてしまったりしたら……。

そう思うとこわくて、しばらくは記事を担当することやインスタグラムのライブ配信に出ることを避けていました。その一方、読者アンケートでもサスティナブルの記事への反響がどんどん大きくなり、もっと知りたい!という意見が増えるとともに、自分の中のモヤモヤもさらに大きくなっていったんです。

ー 今のように、記事を書いたり、個人でも発信したりするようになれたのは、何かきっかけがあったのですか?

ある時、編集部でサスティナブルの勉強会が開かれたのですが、自分には伝える資格がないんじゃないかと悩んでいた時だったので、勉強会に参加すること自体とても怯えていました(笑)。こんなことも知らないのか!って言われたらどうしようって。でも、講師として来てくださったサスティナブル推進協会の方の言葉で、意識が180度変わりました。

「サスティナブルは、我慢で成り立つものではないと思うんです。我慢しては続けられない。例えば、小さな子どもが、マイボトルの中の飲み物がなくなって喉が渇いて泣いているのに、ペットボトルはNGだから買わないというのは違うと思うんです。サスティナブルなことをしようとして、自分が不幸になってはいけない」と。

そして、「1人の100歩より、100人の1歩」という言葉で、とても腑に落ちました。1人で100歩進むのは大変だけど、100人ができることをちょっとずつやって1歩ずつでも進めば、もっと大きな100歩になるんだって。完璧じゃなくてもいいけど、少しずつでも進むことが大切だという考え方で、肩の荷がおりて気持ちも軽くなりました。

ー 素敵なお話ですね。どうしても身構えてしまうけど、それを聞くと気軽にやってみようという気持ちになれますね。

そうなんです。サスティナブルって、知れば知るほどわからなくなってしまうときありますよね。片方から見るとエコだけど、もう片方から見ると他の課題も見えてきて……。考えれば考えるほどわからなくなってしまうけれど、一番怖いのは、「思考停止をしてしまう」ことだと思います。それは、書く側も読む側も。すぐに解決できる問題じゃないからこそ、どうすればいいか考え続けることが大切だなと感じています。

いろいろな選択の中で、自分が“心地良い”と感じることを選んで欲しい

ー 具体的にどんな活動をされていますか?

雑誌としては、海や自然の現状や問題、その問題はどうしたら解決できるのか、様々な専門家にお話をお聞きしながら、『HONEY』なりの提案をしています。誌面やWEBでの記事以外にも、昨年からオンラインで「HONEY SUSTAINABLE MEET UP」という勉強する場をスタートしました。サスティナブルな取り組みをしている方をゲストにお招きし、毎回違うテーマでお話しをしていただいています。

コミュニティサロンもあるのですが、そこではこちらから発信するだけでなく、例えばマイボトルなに使ってる?といったような、情報交換をすることもあります。サスティナブルに興味を持っている方が現在200名くらい参加してくれていて、逆にみなさんにいろいろと教えてもらっています。

月1回はサロンメンバー達と「ビーチクリーンディ」とし、各自の身近な海や街をお掃除する日を設けています。『HONEY』編集部では、最近みんなで一緒に鎌倉・材木座海岸のビーチクリーンをしました。実際やってみると、どんなものが落ちているのかよくわかります。ゴミを見ることで、自分たちの暮らしの中で、何に気をつけたらいいのかがわかるんです。

編集部で行っているビーチクリーンの様子

ー 発信する時に、意識していることはありますか?

個人的には、押し付けることはしたくなくて、選択肢をいろいろと提案して、その中で自分が心地よいと感じるものを選択してもらえたらいいなと思っています。先にも話したように、まず自分が気持ちいいことが大前提だと思うんです。先日、海から鎌倉駅まで1人でごみを拾ってみたんです。最初はちょっとドキドキしたけど、なんだか気分がスッキリしてすごく気持ちよかったです。こういうことなんだなって、実感できました。

ー 気持ちよくできることを続けていきたいですね。普段の暮らしで変化はありますか?

1番変わったのは、洋服や物の選び方です。以前は、ファストファッションが大好きでよく買っていたのですが、いまは大量生産のものというよりは、生産背景を知った上で納得した物を選ぶようになりました。そのブランドを応援するという意味もあります。

また、仲良しのモデルが立ち上げたファッションブランド〈Vicente〉とコラボして、サスティナブルなデニムを作りました。デニムは作る工程でたくさん水を使うのですが、このデニムは使う水をできるだけ減らして作っているんです。これはスタンダードで長く履いてもらえるような形だけど、次はもう少し大人っぽいシルエットのデニムを制作中。今後サスティナブルを軸にしたECサイトをスタートする予定なので、こういったサスティナブルなものづくりにも、もっと関わっていけたらと思っています。

写真左上/〈Vicente〉と『HONEY』のコラボデニム。右上/〈Vicente〉の「2pac BASIC TEE」。「購入すると売上の一部が植林団体に寄付されるんです」。左下/〈Hydro Flask〉のマイボトルを愛用中。「取っ手付きで持ち運びしやすいのでお気に入り」。右下/バリ島生まれの廃タイヤを再利用して作るフットウェアブランド〈Indosole〉のビーチサンダル。「土踏まずの部分が盛り上がったソールで、足にフィットしてとても履きやすいんです」

ー 後半では、メンタルケアやドゥーオーガニックの印象に残った商品などについて、お話を伺います。

photos by yoshimi
   edit&text by Hitomi Takano

稲見悠夏さん

稲見悠夏さん
(いなみ・ゆか)
ビーチライフスタイル誌『HONEY』副編集長。ビューティ誌『HONEY Beauty』インテリア誌『BEACHHOUSE』編集長。編集をメインに、イベントやECアイテムの制作、サスティナブルやSDGsを意識した記事に多く携わる。編集部では、月1回クリーンアップを開催中。ダイエット美容家・本島彩帆里さんと「メンタルケア」のコンテンツを発信したり、ラジオに出演したりと幅広く活動中。
http://honey-mag.jp/
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